最高裁判所第三小法廷 昭和37年(オ)1007号 判決 1963年12月24日
上告人 中川真晤 外二名
被上告人 長崎税務署長 外一名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人弁護士岩本健一郎の上告理由第一点について。
論旨は、原判決の法令違背を主張する。
しかしながら、原判決が上告人らの得た利益は相続税法九条により、贈与によつて取得したものとみなさるべきものであり、また、所論国税庁長官の基本通達は、下級行政機関の権限の行使についての指揮であつて、国民に対し効力を有する法令ではないとした判断は、正当である。したがつて、原判決に所論の如き相続税法違反はなく、また、通達違背は民訴法三九四条にいう法令の違背にあたらない。
なお、論旨中、税理士は国家行政組織法上の法機関であるとの主張は、独自の見解というよりほかはなく、また、通達の内容が事実たる慣習であるとの主張も原判決の認めていないところである。
論旨は、結局、独自の見解に立ち或は原判決の認定しない事実を主張して原判決を非難するものであつて、採用できない。
同第二点について。
論旨は、本件のような処分は租税法律主義に反し、これを是認することは憲法三〇条、八四条に違反すると主張する。
しかしながら、本件処分の適否は相続税法九条の解釈問題であつて、同条の解釈として、本件のような場合に、前寂の如く、贈与税納付義務があると解釈される以上、本件処分は法律に基くものであつて、所論違憲の主張は、その前提において既に理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 石坂修一 河村又介 横田正俊)
参考
第二審判決(控訴人中川真晤外二名、被控訴人長崎税務署長外一名)は、「当裁判所も控訴人等の本件請求を理由がないものと判断するのであつてその理由は原判決理由中の記載と同一である」として控訴を棄却した。